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真の5G年内提供めざし、SAネットワークへ移行開始

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 【ソウル支局】日本では先月末からようやく始動した次世代高速通信規格5Gだが、韓国では昨年4月3日、米国とほぼ同時に「世界初」をかけて5G商用サービスを始めた。

 それから1年を経て、韓国の通信事業者らは初期段階のノンスタンドアロン(NSA)ネットワークから先進の5Gスタンドアロン(SA)への移行を開始。

 従来の3.5ギガヘルツ帯に加え、28ギガヘルツ帯も使用した「真の5G」サービスの年内提供を目指している。

 5GのNSA方式は、現行の4G・LTEのコアネットワークと5Gの基地局を組み合わせた構成。端末と基地局が通信する際の制御信号はLTE側の制御機能に依存し、5G側はデータ信号のみの搬送を行う。

 5Gの特徴は高速大容量、超低遅延、多数同時接続の三つだ。最高伝送速度は10ギガビット秒で4Gの10倍。

 遅延は1ミリ秒で4Gの10分の1。1平方キロメートル当たりの接続機器数は100万台で現行の30-40倍とされ、モバイル向けだけでなく幅広い産業分野への活用が期待されている。

 ただ現状、NSAはモバイルブロードバンドの延長との位置付けで、5Gの本領が発揮されるのはSAが導入されてから。

 また、韓国では5G用として割り当てられた二つの周波数帯のうち現在は3.5ギガヘルツ帯のみを使用しており、B2Bサービスの展開には28ギガヘルツ帯の早期商用化が課題となっている。

 高周波数帯(ミリ波)の28ギガヘルツ帯は、より広い帯域幅を確保できるため高速大容量化に向き、理論値では最大20ギガビット秒の通信速度を実現。

 一方で直進性が強く減衰しやすいため長距離通信には向かず、膨大な数の基地局を整備する必要がある。全国展開には時間がかかると見られるが、携帯電話各社は年内に一部サービスを開始したい考えだ。

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SKテレコムの基地局設置の様子

 SKテレコム、KT、LG U+(ユープラス)の3社はインフラ整備を急ぐとともに、5Gのサービスを拡充していく。

 最大手SKテレコムは昨年から、米マイクロソフト(MS)と共同でスマートフォン向けクラウドゲームサービス「プロジェクトxCloud」のプレビューを提供してきたが、今後は本格的に展開。

 また、コンピュータ上の仮想世界と現実世界を密接に融合させる複合現実(MR)専用スタジオ「ジャンプ・スタジオ」を開設し、コンテンツメーカーやプロバイダの3Dホログラフィックコンテンツの制作を支援する。

 法人向けではアマゾンウェブサービス(AWS)やMSと協業して5Gエッジコンピューティングサービスを開始。国内に15のエッジコンピューティングハブを設立し、ドローン宅配や遠隔診断サービス、スマート工場向けサービスを展開していく。

 例えばグループ傘下の半導体企業、SKハイニックスの工場に5Gの私設ネットワークを構築してスマート工場システムを実装。

 またソウル市政府とともに、次世代インテリジェント輸送システムの実現に向け、5GベースのADAS(先進運転支援システム)サービスを提供する。

 業界2位のKTは、法人向けプライベート網の構築に注力。これまで150のネットワークを構築し、さらに53を構築する予定だ。

 今後はスマート工場、コネクテッドカー、観光、サプライチェーンシステム、災害管理、公共安全分野での5G活用を推進し、5G自動運転バスも運用する。

 3位のLG U+では5Gを用いたAR(拡張現実)やVR(仮想現実)コンテンツ提供を強化。アジアの主要通信事業者にコンテンツを提供する契約も締結した。

 今後、クラウドベースの高品質AR教育コンテンツや、ヘッドマウントディスプレイを使用するVRゲームを積極展開していく考えだ。